46番街

思ったことを書きます。

JR線・地下鉄連絡路線図の修正部分を読み解く

 JR東日本の首都圏エリアの一部駅には、以下ような路線図がホーム上屋から吊り下げられている。主に京浜東北線や山手線、中央・総武線などで見かける。

 

 「JR線・地下鉄連絡路線図」(大宮駅にて撮影)というもので、下部のアロンアルフアの広告も相まって少々古めかしい雰囲気を醸し出している(この広告は駅によって異なる)。というか実際に古い。私が物心ついた頃(2000年前後)にはもうあった。JR初期からあるのだろうか。それを証明するかのごとく、後から新しいシールが大量に貼り付けられている。どれぐらい貼り付けられているのだろうかふと気になったので、洗い出してみることにした。

 

 まずは左上、23区北西部。東京メトロ副都心線に対応した部分が目立つ。営団地下鉄から東京メトロへ移行したのを機に営団成増駅が地下鉄成増駅に改称されているので、その部分も上貼りされている。池袋~和光市間は営団有楽町新線開業時に既に修正が加えられていたのであろう。

 なお、この路線図は民鉄を除いているので、本来西武有楽町線新桜台駅は表記されない筈であるが、小竹向原新桜台暫定開業時に営団有楽町線と一体に扱われていた名残なのか、表記がある。1994年の練馬延伸には対応しておらず、新桜台駅で路線図は途切れたままとなっている。

 南北線は最初に開業した区間(駒込赤羽岩淵)の時点で後から貼り付けられている。後年駒込駅から四ツ谷駅、さらには溜池山王駅へと延伸されていくが、それぞれの区間で微妙に色味が異なっているのがおわかりだろうか。

 都営大江戸線は最初に開業したのが光が丘~練馬間であるが、路線図上に練馬駅の表記がないので、1997年の新宿延伸時か2000年の全線開業時辺りに修正されているものだろう。ただ、大江戸線(当時は12号線)と南北線の開業は同じ1991年なので、光が丘~練馬間も後から追加されていたものと推測される。もしくは、JR・地下鉄から見ると孤立区間であったため、「連絡路線図」から除外されていたのかもしれない。新宿~国立競技場間が色褪せているのはよくわからないが、ただのエラーであろう。大江戸線は新宿~国立競技場~両国~飯田橋~都庁前間といった大半の区間が2000年開業と新しい路線で、広範に修正がなされているので以降は特筆すべきポイントを除き割愛する。

 

 次に左下、23区南西部。南北線は最後に開業した目黒~溜池山王間の部分も色合いが異なっていて、一番濃くなっている。実際のラインカラーと一番近いのは駒込四ツ谷の箇所だ。

 なお、2016年に<原宿>表記が追加された明治神宮前駅には括弧書きで原宿と追記されているものの、シールが貼り付けられた形跡は見つからない。JR原宿駅との乗換駅であることを示すために、元から記載されているのだろう。

 

 港区・中央区千代田区近辺のエリア。なんといっても高輪ゲートウェイ駅(2020年開業)が目立つ。この路線図はわざわざここまで対応したのかと驚嘆した覚えがある。もう対応しきれないし老朽化もしているから撤去されるのではないかと勝手に思っていたが、今の今まで維持され続けているのが凄まじい。ただ、同年に開業した虎ノ門ヒルズ駅は対応していない。

 このエリアでもう1つ際立つのは都営三田線で最後に開業した三田~目黒間であろう。南北線同様、既存区間と延伸区間で色味が異なる。

 

 千代田区台東区・北区周辺のエリア。この辺りは既に紹介した南北線大江戸線の追加程度で目立った修正痕は無い。

 

 23区東部のエリア。ここは北西部に負けず劣らず修正が多い。まずは東京メトロ半蔵門線。2003年延伸の水天宮前~押上間は当然ながら、1990年延伸の三越前~水天宮前間も上貼りされた形跡があるのは驚きだ。経年劣化なのか、この区間だけ色褪せが目立つ。また、

 同じ年にJR京葉線も東京~新木場間が開業しているので、こちらも加えられている。余談だが、JR総武線が千葉、京葉線が千葉みなとで途切れているのはレイアウト上の問題なのか、電車特定区間の終端だからなのかが気になるところである。

 清澄白河駅森下駅住吉駅近辺は大江戸線開業の後、さらに半蔵門線開業で次々と路線図が加えられていってるためか、非常に窮屈なレイアウトとなっている。両国駅は一体とできなかったのか、JRと大江戸線で独立している。JRの両国駅は後付けのため小さく見えにくい。

 もうひとつ、西船橋駅の右下辺りにも修正痕がある。位置を見る限り、東京メトロ東西線に対する「朝・夕のみ延長運転」の部分だと思われるが、調べる限り1980年代の時点で営団東西線は既に朝・夕のみ津田沼駅まで直通運転が行われている運行形態だったようなので、以前は何と表記されていたのか想像がつかない。1996年以前は土休日も津田沼直通があったようだが、現行の文言に「平日」という文字がないのでそれ絡みとは考えにくい。

 

 最後に路線名とラインカラー。南北線大江戸線副都心線は後付である。大江戸線は12号線から更に貼り替えたものだろう。副都心線に至っては枠からはみ出している。

 

 発見した修正を時系列順にまとめると以下の通りである。

 

1990年3月10日    JR京葉線東京~新木場間開業

1990年11月28日  営団(現:東京メトロ)半蔵門線三越前~水天宮前間開業

1991年11月29日  営団南北線駒込赤羽岩淵間開業

(1991年12月10日 都営12号線(現:大江戸線)光が丘~練馬間開業)

(1994年12月7日   営団有楽町新線小竹向原新線池袋(現:副都心線の池袋)開業)

1996年3月26日    営団南北線四ツ谷駒込間開業

1997年9月30日    営団南北線溜池山王四ツ谷間開業、営団銀座線溜池山王駅開業

(1997年12月19日 都営12号線練馬~新宿間開業)

(2000年4月20日   都営12号線大江戸線に改称、新宿~国立競技場間開業)

2000年9月26日    営団南北線目黒~溜池山王間、都営三田線三田~目黒間開業

2000年12月12日  都営大江戸線全線開業

2003年3月19日    営団半蔵門線水天宮前~押上間開業

2004年4月1日      営団民営化により東京メトロ発足、営団成増駅を地下鉄成増駅に改称

2008年6月14日    東京メトロ副都心線池袋~渋谷間開業、有楽町新線副都心線編入

2020年3月19日    JR山手線・京浜東北線高輪ゲートウェイ駅開業

 

このことから、この路線図が1990年以前から存在していたことがわかる。1990年の前年、1989年のJR東日本営団地下鉄都営地下鉄の出来事は、

 

1月26日  営団半蔵門線半蔵門三越前間開業

3月19日  江戸橋駅日本橋駅に改称、都営新宿線篠崎~本八幡間開業

 

であった。これらは修正された形跡が見つからないので、JR線・地下鉄連絡路線図は1989年度中に設置されたと考えられる。駅の案内サインや広告など、古くからものが残っているということは意外と多いのだが、情報が更新されやすい路線図で30年以上前のものを使用し続けていることに驚きを禁じ得ない。

 今後は有楽町線南北線延伸計画があるものの、2022年に鉄道事業許可を受けたばかりで、開業時期は未定である。この2路線にも対応がなされたら非常に面白いのだが、それまでには流石に撤去されているだろう。

 

 余談だが、この路線図について画像検索してみたところ、このJR線・地下鉄連絡路線図に広告を出している三共広告という広告会社のサイトを発見した。制作実例として写真が複数掲載されており、古い写真があるのではないかと思い閲覧してみたが、いずれも副都心線開業以降のものであった。