予てより同業他社よりサステナ車両*1の導入を予定していた西武鉄道であったが、昨日導入車両が発表された。
ファンの間では様々な憶測が飛び交っていたが、東急9000系と小田急8000形が譲渡されることとなり、驚きが広がっている。
東急9000系は塗装の省略が可能なステンレス車体であり、VVVFインバータ制御である。車齢は30年前後と古い車両になるが、ステンレス車体は腐食に強く経年劣化に関してはあまり問題にならない。
一方で小田急8000形は制御装置こそVVVFインバータ制御に更新*2され、内外装もリニューアル時に手を加えられているものの、車齢は約35~40年であり、鋼製車体である。導入予定線区である国分寺線を走る新2000系よりも古い車両で、経年劣化を心配する声も見受けられた。
90年代以降のステンレス車両が譲渡されるのではないかという見方が多かったがゆえに、確かに予想外の展開ではあるが、考えてみると8000形の導入も悪くない選択肢なのではないかと思う。
懸念されている経年劣化についてだが、8000形は様々な腐食対策が講じられている。
・構体の外板は厚さ3.2mmの耐候性鋼板
・腐食しやすい屋根にはステンレス板を使用
・側面の外板は台枠の上端で突き合わせて溶接
・床板にもステンレス製キーストンプレートを使用
・側窓のサッシレス構造化と水受けと排水パイプの設置、アルミ製縁取りの設置
特に側窓の対策については、同じ鋼製車体で一段下降窓の5200形が雨水による腐食に悩まされて廃車が早まった*3のに対して、8000形の長命化に貢献していると言って良いのではないだろうか。
8000形の窓枠(左)と5200形の窓枠(右)。8000形側窓のアルミ製縁取りが目立つ。
上記の設計が功を奏してか、現在でも車体は劣化を感じさせず、綺麗な状態を保っている印象を持つ。これに加えて主制御器や補助電源の換装、運転機器や内装のリニューアル等3000形や4000形に準じて大規模に更新されているので、まだしばらくは走れそうだ。
と言っても、新5000形の導入や保有車両削減に伴って、2020年代に入ってから徐々に廃車が進行している。その中で今回の西武鉄道の施策により譲渡される運びとなった。要塗装の鋼製車ながら腐食対策が万全で、走行機器も現代に準じている8000形は、西武鉄道の求める車両として合致する部分が多いのかもしれない。
国分寺線は6両で運行される路線であるが、8000形の6両編成は更新時期が早く、比較的初期の3000形に準じた更新メニューの車両が大半である。更新の遅かった3本のみ*44000形準拠の更新が行われているものの、譲渡に回されるのは初期に更新された車両であろう。最古参といえど、まだまだ小田急の主力車両だ。
参考
2022 年3月期 第3四半期決算に関するFAQ
(https://www.odakyu.jp/ir/financial/o5oaa1000001z0qi-att/odakyu_2021.3Q_FAQ.pdf)